年次有給休暇の取扱いは本当に難しい。先生や事務長から相談を受けるたびいつも思います。
年次有給休暇を取得させてあげたいと考えている先生は多いですが、実際に取らせてあげられる環境が整っていないために、十分に取得させてあげられていないのが現状のです。
今回は特に小規模のクリニックで取り入れられることが多い、有給休暇の買い取りについて解説します。
上手に活用することにより、職員のモチベーションアップや人材不足の解消にも生かされることがあります。

有給休暇の買い取りは違法である

有給休暇の買い取りについて解説する前に、最初にお伝えしなければならないことがあります。
それは有給休暇の買い取り自体は違法であるということです。

年次有給休暇は労働者の心身の疲れをとるために設けられた制度ですから、たとえ職員が同意したとしても休みを取らせてあげない約束をすることは、年次有給休暇の取得を妨げるものとして違法になります。
しかしすべてのケースにおいて年次有給休暇の買い取りを認めないわけではありません。
すでに消滅したものについて金銭の支払いをすること自体は違法ではないとされています。
すなわち年次有給休暇の取得をあらかじめ制限し、金銭で保証することについては違法ですが、すでに消滅した分について、職員に金銭を渡すことについては違法ではないのです。

違法にならない有給休暇の買い取りとは

次のケースでは年次有給休暇の買い取りが違法にならないと考えられます。

  1. 付与から2年が経過し、消滅した年次有給休暇について金銭を支払う場合
  2. 退職時に使用しなかった年次有給休暇を、退職後に金銭で支払う場合

これらについては違法ではないとされています。
理由は前項で解説した通りですが、上記の2つについては既に年次有給休暇を使用できなくなったものであり、年次有給休暇の取得を妨げるものではありません。
年次有給休暇の主旨をゆがめるものではないため、年次有給休暇の買い取りが認められるというわけです。

有給休暇の意義を守ることが第一

年次有給休暇についてはルールさえ守れば買い取りも認められます。
しかし有給休暇の買い取りを制度として導入するにしても、しないにしても、年次有給休暇をどのように取り扱うか決めることが大切です。
先日先生からこのような相談を受けました。

受付が2名いるが、受付Aは子供が小さいこともあり、年次有給休暇はほぼすべて取得しているが、受付Bは一切取得していない。
受付Bは受付Aがいつ子供の関係で休むかわからないので、計画的に年次有給休暇を取得したくてもできないのだということです。
受付Aはもちろん悪気があるわけではありません。
受付Bも受付Aに休まないでほしいとか、休みを取れないことについて不満を言っているわけではありません。
しかし先生としては受付Bには負担をかけてしまっているとは感じていました。

このようなケースであれば、年次有給休暇の未取得分を金銭で支払ってあげることも一考ではないかと思います。

年次有給休暇と上手に付き合うことが大切

私は年次有給休暇については、労働基準法を遵守するという意識だけでは、上手に運用することが難しいと感じています。
配置や職務の整備も必要ですし、制度運用に関する不平等の問題もあります。
どの医院にでも当てはまる解決策がないものですから、ルールを作成して終わりではなく、今後のメンテナンスを含めて長期的に考えていく必要があることを覚悟しなければなりません。

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