有給休暇は私が顧問先から相談を受けることが多い内容の一つです。

有給休暇の取得は労働基準法で認められた権利ですから、職員から取得したい旨の申し出があれば取得させてあげなければなりません。そのことは院長や事務長も十分に理解していただいていると思います。

しかし「当日に申請された年次有給休暇の取得でも認めなければならないのか」という相談を受けることがしばしばあります。
有給休暇は労働者(職員)の権利だから、いついかなる時でも認めなければならないという風に考えている方も多いようです。
それは院長や事務長だけでなく、有給休暇を取得する側の職員もそう考えているようです。
しかし実際には違います。
それでは順に当日の有給休暇の申請について確認をしていきたいと思います。

有給休暇の申請はいつまでにしなければならないのか?

冒頭でお話をしましたように、有給休暇の取得の申出があればいつでも休みをあげなければならないとお考えの方が多いようですが、実際には違います。
使用者(医院)は年次有給休暇の申請に対して、時季変更権(※)を有しています。

時季変更権とは労働者(職員)から年次有給休暇の申請があった場合に、その日に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営が妨げられるときに、時季の変更を申し出ることができる権利です。

もしも職員から当日に年次有給休暇の申請があったとしたら、医院は時季変更権を行使できません。
ですから年次有給休暇は、少なくとも事前に申請をしなければならないとされています。

当日の朝に申請すれば事前申請をしていることにならないのか?

年次有給休暇は0時から24時までを1日として考えます。
たとえ会社の始業時刻が9時だったとしても、9時前に申し出れば事前に申し出ているとは言えません。
少なくとも前日の23時59分までには申請が必要です。

それでは年次有給休暇の当日申請は認めないほうがいいのか?

ここまでの年次有給休暇の当日の申請があったとしても、取得を認める必要がないことを説明しました。
しかし年次有給休暇の当日申請を認めるかどうかを検討する際に考えなければならないことがあります。
ほかの医療機関では当日の有給休暇の申請を認めているところが多くあるため、職員の側からすると「有給を取らせてくれない職場」という印象を持たれてしまう可能性があるということです。
その点を踏まえて考える必要があります。

年次有給休暇の当日申請を認める場合をあらかじめ決めておく

冒頭で取り上げたように、当日に欠勤の申出があると院長だけではなく、他の職員にも負担がかかります。
したがって無制限に年次有給休暇の当日申請を認めることは、医院にとっても職員にとっても良いルールとは言えないでしょう。
当日の年次有給休暇の申請に一定の縛りを設けて、職員のモチベーションを失わない工夫も必要です。
そこで就業規則を活用し、当日の年次有給休暇の申請は本人や家族の病気やけがに限るのはいかがでしょうか?
それでも当日の年次有給休暇の申請が多い場合には病院の領収書の提示を求めることを条件にするのも良いでしょう。
職員のモラルや当日の年次有給休暇の申請の頻度に応じて、就業規則でルールの徹底を図る工夫をしてみてください。

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