開院当初に良かれと思って設定した賃金の支払日や締日でも、職員の増加や事務量の増加により、締日や支払日の変更をしたほうが良いと思うことがあると思います。
そのような場合に賃金の締日や支払日を変更することになるのですが、変更をするためにはいくつかの手続きを経る必要がありますし、最低限抑えておかなければならない法律もあります。
そして何より、職員をはじめとする関係者に説明をする必要もありますから、翌月からすぐに変えようというわけにもいかないでしょう。
このページでは、賃金の締日や支払日の変更の時に気を付けなければならないポイントについて解説します。
労働基準法に気を付ける
賃金の支払いについて労働基準法第24条では次の5原則が定められています。
- 通貨払いの原則(賃金は通貨で支払わなければならない)
- 直接払いの原則(賃金は直接本人に支払わなければならない)
- 全額払いの原則(賃金はその全額を支払わなければならない)
- 毎月1回以上払いの原則(賃金は少なくとも月に1回以上は支払わなければならない)
- 一定期日払いの原則(賃金は一定の期日を定めて定期的に支払わなければならない)
これが賃金支払いの5原則で、これに違反する支払い方は認められていません。
この中で賃金の支払日の変更の際に気を付けなければならないのは、毎月1回以上払いの原則です。
支払日を変更したとしても、1度も賃金の支払がないことがないようにしなければなりません。
賃金の締日や支払日の変更は早めに連絡する
賃金の支払日は職員にとっては大きなことです。
家賃や光熱費など決まった支払いもありますから、賃金の支払日が変わると生活に支障をきたすことも考えられます。
職員が十分に対応できるように、締日や支払日の変更は早めに周知しましょう。
また出勤回数は少ないかもしれませんが、代診の医師にも忘れずに連絡をしましょう。
就業規則を変更すること
賃金の締日や支払日は就業規則の絶対的必要記載事項です。
ですから変更した場合には就業規則の変更の届出が必要です。
前述したように職員に締日や支払日の変更を伝えたら、就業規則の変更案を作成し、意見をもらいましょう。
タイムカードの設定を変える
忘れがちですが、締日を変更した場合にはタイムカードの設定を変更しなければなりません。
もしも20日締めを15日締めに変更する、という場合であれば、1か月だけ「21日~15日」という月が生じます。
集計機能がついているタイムカードであれば、タイムカードの設定の変更を締日の当日から翌営業日前までに行わなければならない場合もあります。
締日を変更することが決まったら、タイムカードの説明書を確認することを忘れずに行ってください。
設定に不安があれば、業者に問い合わせる必要が生じることがありますので、できるだけ早めに動き出したほうが良いです。
シフト表の調整
タイムカードと同様に注意しなければならないのはシフトの調整です。
締日や支払日の変更をできるだけ早く職員に伝えなければならない理由はここにもあります。
シフト表を作成する場合にも、あらかじめ締日を変更したものでシフト表を作成しましょう。
「シフト表を変えるのは大変だからシフト表だけそのまま以前の締日で行いたい」と言われたことがありましたが、職員が混乱する原因にもなります。※給与明細を渡したときに、シフト表と給与明細の勤務時間が合わないという申し出を受けることがあります。
締日や支払日を変えるのであれば、この部分は「従前通り」などと例外を作らずに、ルール全体を変えたほうが後々には良いです。
職員への配慮がカギ
賃金の締日や支払日の変更には手間がかかります。
そして同時に職員への配慮も大切です。
賃金がいつ支払われるのか、いくらもらえるのかは職員にとって大きな関心事ですから失敗することもできませんし、やると決めたら後戻りもできません。
変えてみてから様子を見ようなどと軽い気持ちで変えるものではありませんから、慎重にならざるを得ません。
これまで職員には早めにアナウンスすることをお伝えしましたが、いつから変えるのかについてはよく考えたほうが良いでしょう。
例えば賞与と同じ月に設定してあげれば職員にとって影響が少なくなります。
夏の賞与の時期に変更をすればよいか、冬の賞与の時期に変更すればよいのかも考える必要があります。
どうかよく検討されたうえでスムーズに変更ができるようにしてください。